マックの黄色い募金箱、
これがどんなところへ届けられるかご存知ですか?
現在、全国で20万人もの子どもが難病に苦しんでいます。中には治療のため、自宅を離れ遠くの病院に入院しなければならない子どももいます。その子どもたちにはそれぞれ家族がいます。病気に対する不安に加え、二重生活となる経済的負担、家族が離れて暮らさなければならない精神的負担、多くの負担が家族にかかります。
ドナルド・マクドナルド・ハウスは病気の子どもをもつ家族の滞在施設。日本では2001年に設立され、ボランティアや様々な寄付により運営されているのです。
みなさんがマクドナルドの店舗で目にする黄色い募金箱、ここドナルド・マクドナルド・ハウスの活動に繋がっているのです。募金箱のその先へ~今回、日本第1号となるせたがやハウスを見学させていただくことになりました。
ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがやは、国立成育医療研究センター(東京世田谷区)に隣接しています。たくさんの木々や植物に囲まれたハウスは、外観も温かなオーラを放っています。13時のアポイント、ハウスマネージャーの峯田 洋一さんを訪ねました。
エントランスホールはグリーンやぬいぐるみ、おもちゃ、手作りの品などが置かれ、窓の外はすぐに中庭、心地よい空間が広がっています。
■ドナルド・マクドナルド・ハウスとは?
峯田さんから、まずドナルド・マクドナルド・ハウスについて説明いただきました。現在世界約30ヶ国に300以上のハウスがあり、それぞれの国の制度に従い、どの国でも財団を設立し、小児医療施設の近くで運営されています。どの国においても、財団の使命は病気のお子さんのご家族を社会全体でサポートする仕組みを作っていくこと。日本では現在7つのハウスが運営され、10ヶ所目まで創設の計画が進行、年末には東大ハウスが完成する予定です。この仕組みが日本に登場し10年、その活動は広がりつつあります。
~ドナルド・マクドナルド・ハウスの誕生~
1974年フィラデルフィア、アメリカンフットボール選手として活躍していたフレッド・ヒルの娘が白血病で入院、その時の経験から病院の近くに家族が少しでも安らげる滞在施設ができないものかと考えます。病院周辺のマクドナルドの店舗オーナー、病院の医師、フットボールチームの仲間の協力を得て、募金活動が進められます。同年フィラデルフィア新聞社が提供した家屋を改造、世界初の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が誕生したのです。日本では、「日本の医療を市民の協力で変えていく必要がある。それは日本に新しい医療文化を創ることである」という理念のもと、ドナルド・マクドナルド・ハウス前理事長(当時国立大蔵病院院長)である開原 成允氏と、当時日本マクドナルド社 社長の藤田 田氏が立ち上がり、様々な困難を乗り越え、2001年設立されました。
せたがやハウスは7つのハウスの中でも最大規模、ツイン19室、シングル2室が稼動、年間1,800人ほどの家族が利用します。訪れた時間はとても静かで意外でしたが、ちょうどチェックイン前の時間だったため。滞在されるご家族は、昼間お子さんのいる病院へ行かれるので、人の出入りも少なく比較的静かなのだそうです。お子さんの休みにあわせ入院を決めるご家族も多い、病院と密接に関わるハウスは24時間年中無休なのです。止まることのないハウスを支えているのが210名のボランティアスタッフ。曜日ごとにチームが結成され、活動は月2回、1回につき3時間を目安としたシフト制、スタッフへの負担が重くなりすぎないような工夫が施されています。そしてハウスを支えるもう一つの柱が寄付。ハウスは100%皆様の寄付で運営されています。1階のエントランスホールの「感謝の樹」には、これまで寄付してくださった方、企業のお名前が記されています。

■パブリックスペース
本当に多くの方、様々な業種の企業にサポートされているハウス、まず2階を見せていただきます。ここはご家族同士、家族やスタッフがコミュニケーションをとれるようにとの思いで作られたスペースです。



イベントや季節の催しも行われるリビングルーム。ここのキルトのラグやクッションはボランティアの方の手作り。張り詰めた気持ちを和らげ、少しでも自分の時間をゆっくりお過ごしいただきたいという気持ちが詰っている。病院との行き来に追われる毎日、ここを自宅と思って、ほっと一呼吸おいていただけると嬉しいと峯田さんは語る。
■プライベートスペース
2階とは対照的な個の空間。ゆっくり落ち着けるベッドルームのフロアが3階になります。パブリックもプライベートも必要、両方のバランスを大事にされているのがわかります。

「実はお部屋にはテレビを置いていません。テレビは階下のリビングでご覧になっていただき、他のご家族とも触れ合っていただければと思っています。とはいえシリアスな状態で、気持ち的におひとりになりたい方もいらっしゃる。そういう時はお部屋で思う存分ゆっくりしていただきたい。第二の家として自由にお使いいただきたいのです。」と話す峯田さん、本当に温かな思いが伝わってきました。
私たちはここで小さなノートに出会います。「滞在された方が綴られたもの、どうぞご覧になってください。」峯田さんに促されノートを開くと、そこにはいろんな文字やイラストだけでなく、それぞれの思い、不安、戸惑いがぎっしり詰っていました。そして、絶望感にさいなまれた時も、共感できる他のご家族と時間を共にしたから、ハウススタッフが近くにいたから、乗り越えられたし、これからもきっと乗り越えられる、そんな内容も綴られていました。こんなにもずっしりくる、手のひらサイズの小さなノートは他にないのではないでしょうか。この様々な思いを持ったご家族にずっと寄り添うハウス、新しい医療文化を創るため、ここはなくてはならない場所なのだと実感しました。
■最後に
「今後もハウスは増えていきますが、まだまだ足りない状態。せたがやハウスでも、本当はお部屋を増やしたいくらいです。またハウス開設前からもボランティアだけで成り立つのかというお声があったように、日本ではまだ欧米ほどボランティア精神は身近なものではありません。阪神大震災の頃から徐々に、そして今回の東日本大震災でかなり浸透してきましたが、もっと成熟させたいと思っています。
実は、ドナルド・マクドナルド・ハウスの認知度も22~23%、まだ低い状態なのです。ハウスをより多くの方に知ってもらうとともに、成熟した社会を創っていきたいと、日々活動しています。」峯田さんはそうおっしゃっていました。
ハウスのコンセプトは"Home away from home"~我が家のようにくつろげる第二の家~。スタッフやボランティアの方々が、そう感じていただける環境・空間作りを心掛けているのがよくわかりました。ハウスに滞在したことで、同じように病気と闘っている家族同士時間を共有することができ、どれだけ救われたかわからない。そう感じたご家族がたくさんいらっしゃいます。市民の力で新しい医療文化が創られる、ここはその現場だったのです。貴重な経験をさせていただきました。丁寧にご案内いただきました峯田マネージャーに心より感謝いたします。
ハウスや財団の歴史は、ここでは触れられなかったのですが、財団ホームページに詳しく掲載されていますので、是非ご覧いただきたいと思います。
ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや
http://www.dmhcj.or.jp/house/setagaya.html
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン
http://www.dmhcj.or.jp/
最後に......やはり、この方との撮影を忘れてはなりません。峯田さんとドナルドと、一緒にとらせていただきました。記念です!
2011年7月27日
インタビュアー:高橋 江里子
~profile~
高橋 江里子(Eriko Takahashi)
アロマトリートメントのプライベートサロン una gemma (ウナ ジェンマ)のオーナーセラピスト。流通、企画・制作、コンベンション業界などでさまざまな職を経験、その後身体と心に向き合った生活を求め、これまでとは全く異なるセラピストの道へ。ある種合理的な日本の文化にも惹かれ、和のエッセンスを少し取り入れたサロン作りを目指す。日々できるだけシンプルに「きげんよく生きる」ことが目標。



