Vol.1:
ダイアログ・イン・ザーダークのまっくら体験がもたらすものとは?
代表:金井真介氏
みなさんは「真っ暗闇」を体験したことがありますか?
少しの光もない、目が慣れても「まっくら」な暗闇の世界。
そこでの体験は、きっとみなさんに色々なことを
教えてくれることとなるでしょう。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、そんな暗闇での体験を通して、コミュニケーションや感覚への様々な気づきを与えてくれる、全く新しいソーシャル・エンターテイメント。1989年にドイツで生まれ、全世界で600万人を超える人々が体験しているイベントです。日本では1999年以降、NPO法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンによって、現在に至るまで開催が継続して続けられています。
1993年にダイアログ・イン・ザ・ダークのことを新聞記事で見て興味を覚え、自らの体験をきっかけに、1999年より日本での活動をスタートさせたダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表の金井真介さん。今回は、今年で10年目を迎えるダイアログ・イン・ザ・ダークの様々な活動について、話を伺いました。
当時、商品開発のマーケティングやコンサルタントをしていた金井さんは、新聞記事を見た時、その斬新な発想に衝撃を受けたと言います。
「ダイアログ・イン・ザ・ダークを考案したのは、DIALOG SOCIAL ENTERPRISE CEO哲学博士のアンドレアス・ハイネッケ氏。光を遮断した闇空間に小川や芝生などがあり、参加者は触覚や聴覚を頼りに歩いて、その世界を体験する。アテンドをするのは視覚障がい者のスタッフ。日常生活で最も多用する「視覚」を遮断し、逆に他の四感を解き放つことで様々なことを感じさせるというアイディアにショックを受けました。」
健常者と視覚障がい者の立場を瞬時にして入れ替えて対等にする発想に、大きな可能性と未来を感じたという金井さん。実際の体験で心に刻まれたのは、不安や恐怖ではなく温もり。暗闇で的確かつ素早く対応し、リードしてくれた人が全盲の人だったことに驚きつつも、人がいることの安心感を覚えたといいます。
「ハイネッケ氏は、暗闇は人を元に戻すメディアだと言います。暗闇の中では、その人の肩書きや地位、容姿や身なりも関係なくなる。全てを脱ぎ捨てた、その人の本質・人格が現れるのです」
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、目を使わない環境で体験するエンターテイメント。そこには「見える文化」と「見えない文化」の融合があるのだとか。ひとつの障がいはひとつの文化を生む。日常の見える世界を「見える文化」だとすると、「見えない」障がいは「見えない文化」を創出していることになります。それは環境によって変化するものなのだそうです。
「最近、障がいは"ひとつの個性"だと言えるのではないかと考えています。それは個性であると同時に文化。例えば盲目のピアニストがいるとします。それは背の高いバイオリニストと同じ。彼はピアノが上手で、たまたま目を使わないアーティストというだけのことです。"目が見えない"という個性を持ち、そして"見えない世界の文化"を持っていると定義することができるのではないかと。
健常者である私たちは、"見える世界"で生活するのが普通で、"見えない世界"に置かれた自分を想像することは殆どありません。そのため、視覚障がい者のことを助けることがあっても、彼らに助けられた経験のある人は非常に少ないでしょう。けれども、ダイアログの真っ暗闇、何も見えない環境下では、視覚障がい者の助けがなければ健常者はそこで過ごすことができません。私たちは、それを「見える文化」と「見えない文化」の2つが交わる=文化の融合だと考えています」。
この融合で「人が元に戻る」現象が起きます。双方がお互いのことを理解し、その後の態度が変わるようになるのです。見えない人に助けられた見える人は、明るいところで見えない人を助けるようになります。それぞれの文化の人達が、「足りない部分を補い合う」ということを学ぶのです。それまでの上下のような立場が対等な立場となり、相互が共生の念を持つようになります。それは暗闇で私たち人間が野生に戻る瞬間でもあるのです。人も生き物。温もりを求め、相手の存在に安心するものなのです」。
ダイアログの暗闇体験には、
1.人が誰かとシェアすることの大切さ
2.人のアテンドを通して知る「人といること」の安心感とリアリティ
がコンセプトとして隠されているのだとか。
「ダイアログを体験して発見することは新鮮に映るでしょうが、それは人が本来持っている感性を思い出すだけのこと。日常で身につけている地位や権力、立場や役割をすべて手放して、暗闇でただの人となる。そして健常者と視覚障がい者が楽しみながら、お互いを助け、また学び合うことで、色々なことに気づいていくのです。
人はすべて異なるもの。それぞれの考え方や真実、個性を持ち寄り、シェアすることで、変容していくことが分かります。また暗闇で人にアテンドしてもらい、仲間と触れ合う90分で人の温もりを知り、これまで気づかなかった自分の癖も分かるようになります。参加者だけが劇的に変化を遂げるのです」。
こうした体験を通じて、自分のパートナーや知人・友人、知らない人から地域にまで目が行くようになり、社会とのかかわりが気になるようになっていくと金井さん。一人が変わることは、家族を、会社を、地域を、社会を変える原動力になります。一度に大人数ではなくとも、一人ひとりの気づきをそれぞれに現実にもっていくだけで、社会は少しずつ変化していくのではないでしょうか?
入場料は決して安くはありませんが、それはプログラムの維持・運営のため、そして敢えて少人数制を取っているためです。そして、ここでの体験がその後にもたらされる変化を考えれば、決して高い料金ではないと私は思います。
ダイアログは「人として進化するプロジェクト」。全ての人が互いに助け合い、自身を生かし合い、社会を幸せに導けるものだと確信するという金井さんの言葉から、暗闇に広がる無限の可能性と未来への希望が感じられました。
初めてダイアログを訪れたのは、今から8年前。視覚障がい者の松村さんにアテンドをしていただいて、その的確かつ迅速な導きに感謝し、人の温もりの大切さを改めて感じた暗闇体験でした。金井さんの言葉通り、この90分の体験は日常生活では決して感じることのない、色々な気づきと学びを与えてくれます。
最近ではビジネスの現場にも取り上げられ、暗闇研修などが行なわれているほか、タオルや商品の開発など、障がいを生かしての製品作りなども行なわれています。
Vol.2では、8年前にアテンドをしてくださった松村さんと、今回アテンドをしてくださった川端さんに、暗闇の可能性、ビジネスに生かす意義、これから取り組んでいきたいことなどについてお話を伺います。どうぞお楽しみに。
Dialog in the dark
(ダイアログ・イン・ザ・ダーク)
http://www.dialoginthedark.com/
まっくらななかでのソーシャル・エンターテイメント
主催:特定非営利活動法人 ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン
東京都渋谷区神宮前2-8-2 レーサムビルB1F
最寄り駅:銀座線「外苑前駅」徒歩10分、JR「千駄ヶ谷駅」徒歩13分
2011年7月19日&28日 インタビュアー:さかぐち あや
~profile~
さかぐちあや(Aya Sakaguchi)
ライター&アジアンセラピスト。 OLにて3年過ごした後、「書くこと」を履歴に活動を始めて10数年。取材で出会った「Spice」の世界に魅せられバリ島で開眼!一気に東南アジアフリークになる。途中からフードコーディネーターやらコンテンツディレクターやらと尾ヒレ背ヒレが付き始め、現在はインドネシアを中心に、アジアのライフスタイルで心身を健康にする「アジアンセラピスト」と「書くこと関連」を並行して行なっている。



